UX/UIデザイナーとSEOのスペシャリストが一緒に仕事をすると険悪になる!?
これまでに多くのサイトを構築に関わってきましたが、規模が大きなプロジェクトでは、要件に「ユーザビリティの最適化」「SEO対策」の2つが含まれることが珍しくありません。
「SEO対策」自体は、ひと昔前の時代から要求されることが多々ありましたが、今や最低限のSEO対策は当たり前かと思います。
また、最近ではUX/UI、つまりユーザ体験の最大化がビジネスニーズの達成に大きく貢献していることがわかっているので、「ユーザビリティの最適化」の依頼が多くなっています。(UXそのものについては、コチラを参照)
要求するクセに、工数を出すと「そんなに掛かるのか!?」としてスコープアウトすることも珍しくありませんが、、、(汗)
ところが、この「ユーザビリティの最適化」と「SEO対策」を満たそうとすると、それぞれの施策・ソリューションがぶつかり「どちらかを選択すると、どちらか一方が実現できない」といった事態になり、調整が必要になることがあります。
ビジネスマンなので胸ぐらをつかみ合うようなことはありませんが、ちゃんと間に入ってコントロールできるWebディレクター(ないしはプロジェクトマネージャー)がいないと、UX/UI担当とSEO担当とで険悪な雰囲気になる事態は避けられないと思います。
要件の優先度が明確になっていれば、各担当が上手く立ち回ってくれるのかもしれませんが、僕の担当した案件では、残念ながらそんなにうまいバランスでプロジェクトを回すことはできませんでした。。。
僕のスキル不足でしょうか。。。
前振りはここまでとして、本日は僕が実際に体験した「ユーザビリティの最適化」と「SEO対策」が要件として含まれたプロジェクトの問題について紹介したいと思います。
「ユーザビリティの最適化」「SEO対策」が含まれた要件のプロジェクト
クライアントから「ユーザビリティの最適化」と「SEO対策」が要件として含まれた場合、まず相談できるリソースを探すところから始めることになるかと思います。
というのも、UX/UIやSEOは専門性が高いため、自社内でこれらに精通したリソース、またはそれらを専門とする会社に相談し、作業を依頼する事になります。
大きな事業会社やWeb製作会社であれば、UX/UIチーム・SEOチームなどの名称で、社内すべてのプロジェクトに横断的に関わるような形で存在していることがあります。
少人数の会社などで、UX/UI・SEOにも精通するWebディレクターが存在する場合は、上記の限りではありません。 僕自身、HCD-Netより人間中心設計専門家として認定を受けたWebディレクターのため、UX/UIの対応として実際に手を動かすことはあります。
プロジェクト化した後は、アサインされたUX/UIデザイナー・SEO担当が業務に関わります。
UX/UIデザイナーは、コミュニケーションデザインから具体的な画面イメージ(ワイヤーフレーム)まで作業を行いますが、SEO担当は成果物のレビューのタスク、例えるとコンサルティングに近いイメージで参画することになると思います。
すると、お互いが関わるタスクとしては以下になります。
- UX/UIデザイナーが作成した成果物(※)をSEO担当がレビューし、フィードバックを反映
- 出来上がったサイトに対して、公開前にWebページをレビュー
※主要動線やサイト構造、ワイヤーフレームなど
基本的に、前者のレビュータスクの主張が激しくぶつかります。後者のタスクは、UX/UIデザイナー・SEO担当それぞれが考えた施策が反映されているかのチェックですが、インタラクションの部分など実際に触ることで、ひと悶着あったりします。
UX/UIデザイナーが、クライアントと一緒に、あーでもないこーでもないと、時に議論がヒートアップしたりするなどして作り上げたワイヤーフレームに対して、SEO視点でのレビューが入ります。
そのため、UX/UI担当に説明する前から「えー!」という声が聞こえる納得がいかないSEO対策を迫られることがあり、仲裁に苦労します。
個人的な意見としては、どちらかが気が弱かったり、立場が弱かったりすると「じゃあそれでいいです」となってすんなり合意するよりは、お互いが「妥協できない!」っていうほうがラク(※)です。
※ラクというのは、僕としては関わったプロジェクトは内容も結果も満足したいので、簡単にサービスを最大化を諦めてしまうことはできません。そのため、弱い立場の意見をちゃんと聞いて、改めてどちらが良いかの判断材料を集める手間がかからなくて済むという意味です。
では次に、お互いの言い分を確認してみたいと思います。
UX/UIデザイナーとSEO担当の言い分
大前提として、お互いに自分の役割を果たし、より良いサイトづくりを目指してのことなので、わざと相手の足を引っ張ろうとしているわけではありません。
この前提のもと、お互いの言い分を確認してみましょう。
UIデザイナー
利用者にとってわかりやすい・使いやすいことが重要。
仮にSEO対策の結果、検索エンジンからの流入でアクセスしてくるユーザが増えたとしても、わかりづらい・使いづらいでは意味がない。
SEO担当
検索結果にサイトがヒットしなければ、そもそもユーザは気が付かない。
わかりやすさ・使いやすさを最適化しても、アクセスされないのでは意味がない。
ちょっと、極論ですが互いの言い分としてはこのような感じです。
それでは、具体例でお互いの主張を確認してみます。
意見がぶつかる具体的な例
僕が実際に仲裁した事例を紹介します。(今後、新たに出てきたら追加する予定です)
なお、いづれもUX/UIデザイナーが考えた解決案に対して、SEOレビューが入る形となっています。
重要度の低い情報をアコーディオンで隠す
とある読み物系コンテンツにおいて、テキスト量が多いことにより、重要な情報がユーザの目に止まらないおそれがある。この対策として、UX/UI担当が重要度の低い情報をデフォルトで隠すことを提案した。具体的な動作イメージは以下のとおり。
- Webディレクターの認知度(クリックすると開きます)
- Webディレクターという職業は、業界以外の人たちにどの程度理解されているのか気になったことはありませんか? 情報の出処が2ちゃんねる並に怪しいですが、早死にする職業No,1は「Webディレクター」というランキングがあります。この内容は、Webディレクターの認知度 早死にする職業No,1から思うことにて綴っていますので興味のある方はご覧ください。
このUIの対応について、お互いの言い分は以下のとおりです。
UX/UIデザイナー
他に重要な情報があるので、情報同士の優先度を鑑み、必要と感じたユーザが開いて見れればよい。
よって、デフォルトは閉じた状態で、クリックすると開くようすることで解決できる。
特にスマホの場合は、要素を優先度順に縦に並べることしかできないため、重要度の低い情報はデフォルトで隠しておくことで、大事な情報を訴求すべきである。
SEO担当
アコーディオンで隠してしまうと検索エンジンからの評価が得られなくなってしまう。
隠れているテキストの中には、狙っているキーワードが多く含まれているため、開いておきたい。
この時の解決策
モバイルファーストで考えて欲しいと言われていたことから、UX/UI担当の考えを採用しました。
メニューに合わせた論理構造を変更する
グローバルナビゲーションに「指輪」「ドレス」がメニューとして存在する結婚式場ポータルサイトがあった。
ただ、コンテンツ増加に伴いグルーバルメニューの数が10個以上になってしまったため、UX/UI担当が見直しをすることになった(※)。
UX/UIデザイナー
結婚式・結婚式場関連のカテゴリをいくつかの軸で分類し、指輪・ドレスを括る概念である「ブライダルアイテム」に括ることで、メニューの数を5〜9個(※)にする。
※マジカルナンバー(人間が一度に認知できる数は7±2個である)が根拠
SEO担当
ブライダル業界において「指輪」「ドレス」は重要キーワードである。
そのため、これらのコンテンツはトップページから2クリックで届く範囲に配置することで、検索エンジンのロボットのクロールからもれないようにしたい。(階層が深くなるとクロールされない場合がある)
この時の解決策
「ブライダルアイテム」で括ることで、その中に何があるかわかりづらくなる懸念は否めない。
そこで、「ブライダルアイテム」を「指輪・ドレス・etc」に変更し、新しいグローバルメニューを採用。ただしディレクトリ構造については、変更するメリットがないため、旧のディレクトリ構造のママとした。
サイトのルールに沿ったラベリング
とある保険会社のWebサイトにて、保険商材を紹介するページに資料請求のボタンを配置している。資料請求のコンバージョンを上げるための施策を考えて欲しいということで、UX/UI担当と検討することになった。
UX/UIデザイナー
h1などのタイトルから何の資料を請求しているかは明白なのでボタンのラベルは「資料請求はコチラ」で変更する理由はない。ただし、このボタンは「申し込み」といった重要な意思決定がなされるため、そのアクションに最適な色・形にデザインするのが望ましい。
SEO担当
SEO対策の基本として、重要キーワードを含めたい。
多少くどくはなるがボタンのラベルは「○○保険の資料請求はコチラ」としたい。
この時の解決策
どちらの案も問題ないと考えられた。ただ、コンバージョンが下がることは避ける必要があるので、ABテストを行いその結果で判断することとした。
(結果、ユーザ体験を阻害することはなかったので、SEO担当の意見を採用した)
最後に
議論の際、「UX/UIとしてはこうあるべき」「SEOとしてはこうあるべき」という時は、どちらかが間違っているということはなく、お互いが正しいです。
そのような場合は、ディレクター、プロジェクトマネージャーがお互いに言い分を理解し、都度「今回はこっち、理由は○○○○である」という具合に、状況や要件に応じて、サービスを最大化するべく、最適な判断をする必要があります。
また、UX/UIデザイナー・SEO担当とで、それぞれ施策を考える立場の方は、この「こちらの方が効果が出る」としてその根拠をあつめる・論破することに必死になるのではなく、「ユーザにとってどうあるべきか」を最優先に考えましょう。
ユーザのことを追求した結果、UX/UIが最適化されSEOの効果が発揮されるという、理想の状態を生み出すことに繋がるのだと思います。
いがみ合うこともありますが、両者の共通の目的として、プロジェクトの成功を通しサービスの最大化などの事業貢献をすることです。
より良いWebサイトを目指して、日々頑張っていきましょう。
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