人間中心設計専門家になりました!〜 UXの資格 HCDとは〜
Web業界では、UXの視点を取り入れて施策を考えるのが当たり前になり、UXを担う部署やUXタスクを専門で遂行するチームなどを組織化している企業がずいぶんと増えて来ました。
ところが、UXの部署やチームに所属しているだけで、実際にはUXについてはあまり良くわかっていない人がいることも事実です。
僕はここ3年、事業会社に常駐して働くスタイルをとっており、UX・UXDなどの名称がつく部署やチーム名の方と一緒にお仕事する機会も多いです。ただ、仕事で通用するレベルのUXの知見を持っている方は、10人会ったら1,2人いるかどうかって感じです。
案件の規模によっては、UXの部分をお願いするリソースが必要なケースがあるので、体制構築の調整をプロパーを交えて検討することがあります。
そこで、UXがわかっていない担当者をアサインされた場合、残念ながら面倒を見るのはWebディレクターとなります。
(僕のような業務委託のWebディレクターであれば、リソースをチェンジしてくれっていうお願いもあるかと思いますが、さすがにリクエストしたことは無いです)
僕は「教育はしない」という信念があるので(コチラ参照)、頼れないとわかると自分自身でUXのワークを実行してしまいますが、できれば事前にスキルの足りないリソースが割り当てられるのが防げるのが望ましいです。
「そんな都合のいい方法ないよな〜」と思って調べたところ、人間中心設計専門家という「UXを包括してユーザ体験を最大化する設計者」を認定する制度が存在することがわかりました。
この資格を保持していれば、自分がUXについて一定以上の実績・スキルがあることを証明できます。
これにより、UXタスクを担当するリソースを相談した際、「あの人はUXのプロだから、優秀な担当者をアサインしないといけない」という考えが働き、なんちゃんてUXデザイナーのアサインを抑止できるのではないかと考えました。
とまぁそんなわけで試験に申し込み、見事合格をしました!
(年に1回しかなく、タイミング的にほぼ1年待ちました。。。)
2017年4月1日、僕は人間中心設計専門家として認定され、認定書が届きました!
この喜びを分かち合うべくSNSにPOSTしたのですが、Web業界以外の友人からは、「なにそれ?」「怪しい!」というレスが散見されました。。。
う〜ん、そもそも認知度が低いのだな。。。
せっかく認定を受けたのに、知ってる人が少ないというのはちょっと残念なので、本日はこの人間中心設計専門家について紹介したいと思います。
人間中心設計専門家とは
まず人間中心設計専門家とは一体なにか、について触れたいと思います。
人間中心設計推進機構(HCD-Net)という公益団体が認定しているもので、目的は以下のとおりです。
人間中心設計(HCD)活動の「領域」や「役割」を明確化します
人間中心設計(HCD)活動の「活性化」を目指します引用元:人間中心設計専門家とは
これだとわかりづらいですが、僕の言葉で表現すると
人間中心設計専門家とは、「ユーザにとってどうあるべきか」をものづくりのプロセスの中に取り入れ、またそれらのナレッジを体系化して広めることで、社会貢献を果たす人である
といった感じかと思います。
制度としては人間中心設計専門家の他に、人間中心設計スペシャリストというものも存在します。
それぞれの違いとしては、以下のとおりです。
人間中心設計専門家
- HCD 専門領域で後進の育成指導ができる人
- 実業界での実務経験5年以上
- プロジェクトマネージャー、ウェブプロデューサー、コンサルタント、ユーザビリティ 専門家、等
人間中心設計スペシャリスト
- 要求仕様やUI仕様などの設計活動およびユーザー調査・テストなどの活動が自力でできる人
- 専任および兼務として HCD活動を遂行できる人で実務経験が浅い人 •実業界での実務経験2年以上
- プランナー、マーケティング・リサーチャー、システム・エンジニア、リクワイヤメン ト・エンジニア、Webディレクター、UIデザイナー、ユーザビリティ評価者、取扱説 明制作者、等
わかりやすく違いを挙げると、スペシャリストはUXのタスクを遂行できる人で、専門家はUXのタスクに加えて、UXに関わるプロジェクトの立案から教育・啓蒙活動など広い範囲を網羅しているようなイメージです。
実際、専門家のテストでは、スペシャリストにはない項目として、プロジェクトマネジメント領域や社内教育などが含まれていました。
個人的には、名称からスペシャリストの方が格上な感じがしますが、専門家の方が格上です。
ちなみに、名称には正式と略式があります。
正式名称:「特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構認定 人間中心設計専門家」
略式名称:「HCD-Net認定 人間中心設計専門家」
(スペシャリストは専門家の部分を置き換えるだけ)
ちょうど、合格発表直後に名刺が切れたので、さっそく肩書に入れて作ってみました。
正式名称だと長すぎるし、なにより法人に所属している人に見えるので、略称を使っています。
なかなかいい感じだと思っているのですが、Web業界の人には見えないですね。。。
なにやら、建築関係やプロダクトアウトに関わっている感じがします(笑)
まぁ名刺が寂しいと思ってたので、個人的には満足しています。
人間中心設計専門家に認定されるということ
この人間中心設計専門家として認定されるということは何を意味するかと言うと、UXに関して一定上の実績、スキルを有していると証明することができます。
この証明こそが、僕が認定を受けた理由になります。
冒頭で述べた「事前にUXの知見が乏しいリソースのアサインを防ぐ」ということですが、この目的が達成できるかは今後のお仕事の中でわかってくると思うので、また後日結果をお伝えしたいと思います。
また、認定を受けたことの副産物として「単価アップ」という嬉しい効果もありました。
実は人間中心設計専門家となった月に、お付き合いしていた企業との契約終了が決まっていたため、職務経歴書・ポートフォリオに「人間中心設計専門家」の資格を加え、さらにこれまでより単価をアップして営業したところ、面談を行った3社のうち、なんと2社からアップした金額でOKのお返事をいただきました!
(1社は単価が見合わないということで辞退になりましたが、、、)
いやはや、なんとも嬉しい限りです。
人間中心設計専門家になるためには
最後に、認定試験について軽く触れたいと思います。
人間中心設計専門家としての資格認定試験は、制限時間以内に問題を解くような形ではなく、人間中心設計の実績を証明し、その内容が一定の基準を満たしているかどうかを判断する書類審査となります。
具体的に言いますと、12月の年末から1月の下旬まで約1ヶ月間に、指定されたフォーマットに人間中心設計に関わったプロジェクトの実績を記述します。
ところが、この実績証明は超大変です。
いくつか提出する資料はあるのですが、中でも一番大変なのが「B-3 コンピタンス記述書」です。
以下のフォーマットにプロジェクトの概要・ユーザインサイト・ターゲット・ペルソナ・体験シナリオ・企画・要求定義・情報設計(画面設計)・仮説検証・社内啓蒙などの実績を1項目につき500文字を目処に記述します。
黄色のセルの縦1列に対して1プロジェクトを記述するようになっており、3〜5つのプロジェクトの実績が必要です。
上の画像はフォーマットの一部で、全部だとこのような感じです。
- クリックすると開きます
縦長のモニターを使っても一画面では到底収まりません。
最初、エクセルのスクロールがおかしくなったのかと思いました(汗)
この冗談かと思う量ですが、1プロジェクトにつき、先に挙げたペルソナ・体験シナリオなどについてさらに目的や経緯、実行に至るまでの検討プロセスやその効果について細分化され、88個の項目があります。
各項目500文字以内の制限がありますので、MAX想定(5プロジェクト88項目500文字)で記述したとすると、
5 * 88 * 500 = 220,000
なんと22万文字となり、かなりの量になります。
大学のレポートは2,000〜10,000字が多かったですが、一夜漬けだとしてもレポート1つ仕上げるだけで精一杯だった僕にとって、22万字は果てしない文字量です。
1日に10,000字かけたとしても、22日はかかる計算です。
まぁ、項目は全部は書くことがMUSTではないので、実際には15万字くらいかと思います。
(僕は12万字くらいでしたが合格できました)
提出用のフォーマットはコチラにありますので、興味のある方は参考ください。
事前に対応にかかる工数を算出していたので、2016年の年末年始はどこにも行かず、人間中心設計専門家の資料をひたすら作っていました。
これもひとえに家族のおかげです。今年の年末年始は海外にでも連れて行ってあげようと思います。
最後に
人間中心設計専門家になったからといって、UXの専門家になるつもりはありません。
あくまで、主業務はWebディレクター・プロジェクトマネージャーです。
この肩書があれば、「UXについても任せられる」すなわち上流工程への参画にも問題がないWebディレクター・プロジェクトマネージャーとして認識されるため、必然的に難易度の高いお仕事の相談も多くなります。
あ、もちろん、認定を頂いた以上は人間中心設計専門家としての役割も遂行していきますよ。。。
なにはともあれ、肩書に負けないよう、仕事に精進したいと思います。
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